Strange Days

遠野後ろ向きツアー(のはずだった)1日目

2007年11月23日(金曜日) 23時55分 天気:この日は晴れだったのだが

 三日掛けての遠野散策。晩秋の遠野を自転車で駆け巡るはずだったのだが……。


 朝、なんと3:30に起床。東京6:03の新幹線に乗るとなると、こんな時間に起きなければならない。
 地下鉄の始発はまだなので、戸塚まで自力で出なければならない。こういう時にBromptonは便利だ。
 この時間に動いているのは横須賀線だけだが、その横須賀線は東京駅地下深くのホームに止まる罠。乗り換えのためにエスカレーターを延々と上りながら、せめて東海道線を動かしやがれと、JRに対する呪詛をつぶやいていた。
 新花巻で釜石線に乗り換える。新幹線改札口を出ると、もう駅のエントランスだった。大いに戸惑う我が輩であったが、一度駅を出て、地下道めいた通路を通ると、そこが釜石線ホームだった。すれ違いも出来ないような駅だ。いやはや、新幹線停車駅にしてこうか。びっくりしました。たぶん、東北新幹線開通前にはなにもなかったんだろう。それでもって、構内通路を付けるほどの需要もなさそうだったのだろう。
 新花巻駅周辺は白銀の世界で、とても自転車で走れる状態ではなかった。まあ、持ってきたのがブロックタイヤを履いたMTBだったら別だが。Bromptonではまず無理だ。でも、遠野はまだマシかもしれない。そんな淡い期待を抱いていた時期が僕にもありました。
 3両編成のディーゼル車がやってきた。それぞれの車両が単独で運行できるタイプで、乗った車両の車掌席が使われてなかったので、そこにBromptonを押し込んでおいた。意外に席が埋まり、遠野まで立っていなければならなかった。
 遠野まで、おおむね併走する車道の状況と、降雪状況とを観察した。車道は意外に傾斜がなさそうで、峠越えまでの覚悟は不要そうだ。最終日、時間があれば遠野から新花巻まで走るつもりもあったからだ。しかし、雪は遠野に近づいてもまったく減らない。道路はぬかるんでいるか、アイスバーンかだ。Bromptonでどこまで踏破できるだろうか。
 遠野に降りる。さすがに駅員も配備された有人駅で、乗降客も多そうだ。
 駅舎に併設された観光案内所を訪ね、観光地図とパンフレットをもらっておいた。
 さて挑戦だ。Bromptonを展開して、遠野の駅前を走り出した。駅の真ん前はぬかるんでこそいるが、道路の半分くらいまでは氷が溶けていたので、いい感じに走れる。これなら、幹線道路なら走れるのでは……。おおっと、ここでアイスバーンの登場だ。ちょっと日陰だと、氷が全然溶けてないのだな。もうね、これほど恐ろしい道はないのでは。グリップが全くないので、自転車を少し傾けただけでツルリと逝けそうだ。まっすぐ、ゆっくり停止するのさえも恐怖。こ、これはダメだ。使いものにならん。
 素早く予定を変更する。まだ11:00前だ。ホテルに荷物と自転車を預け、徒歩で遠野を回ることにしよう。歩くのもつらそうな状況だが、なんとかなるだろう。
 ホテルは、駅に近いきくゆうというビジネスホテルだった。最初は駅真上のフォルクローロ遠野にしようと思っていたのだが、すでに予約が埋まっていた。きくゆうは各部屋にLANの口があるようなので、むしろ都合良さそうに思えた。
 フロントに聞いてみると、どうぞどうぞということだったので、ありがたくBromptonとパニアを預けた。もう一つ、ドイターのウェストバッグ兼リュックサックを持ってきていたので、これで間に合うだろう。
 さてどうしよう。観光地図を眺め、できるだけ駅に近い辺りで勝負することにする。おっ、博物館があるな。じゃあここで。鍋倉城址近くにある博物館に入った。
 カウンターの人に共通券の存在を教えてもらった。9ある施設のうち、5まで入れて、料金は1050円。正規の入館料は300円からなので、かなりお得だ。しかも3ヶ月有効だという。
 博物館は、やはりというべきか柳田国男オリエンティッドな世界だった。中でも座敷ワラシは強くプッシュしている。館内の案内書きには結構萌え化した座敷ワラシが登場しているものが多い。どこからともなく『幼女! 幼女!』などと連呼する声が聞こえそうだ*1
 2Fには立派なシアターがあって、遠野の昔話を映像付きで上映している。金が掛かっただろうなあ。しかし、20分ほど見て、次の展示に移動するまでの間にも、誰一人として入館者がいない。密かに博物館(と萌え萌え座敷ワラシたん)の将来を危ぶんでいたところ、急に入館者が増え始めた。
 その他、博物館らしい陳列物を眺めた。山伏の多い土地だったようだ。また金山もあったそうで、山の恵みの多い土地だったようだ。逆に、耕地を広くとれなかった面もあるようだ。
 博物館を出る。昼飯にしたい。なんとなく北に向かった。線路を渡り、川を渡ったところでコンビニを発見。駅周辺には全くないので、強いていえばここが直近ということになる。もう少し歩くと飲み屋っぽい店で定食をやっていた。ラーメンとチャーハンのセットというどうしようもないものを頼んだ。これ以上行っても店がなさそうだった。
 とりあえず腹を満たし、また遠野駅方面に取って返した。観光マップを眺めて、駅から歩いていける範囲に、五百羅漢があるのを発見した。ちょっと花巻方面に行った辺りだ。そこまで歩いてみよう。
 ちょっととはいえ、それは自転車乗りの感覚だ。歩きでは結構あった。凍結している路面に気を使いながらなのだから、なおのことだ。
 五百羅漢への登り口近くに縁結びのなんたらという祠があり、駐車場とトイレがあった。人気なし。
 五百羅漢までは、山道を登っていった。凍結して滑る土を踏みながら上り詰めると、車道と合流。五百羅漢はこの先にあった。ってか、舗装路を行けるならそういってくれ。
 五百羅漢の場所までは、さらに荒れた道を行かねばならない。しかし、この雪が肝心の羅漢集団を隠している。なんとなく辺りの岩を睨んでいると、なんとなくなにかが彫られている気がしないでもなかった。でも昔の人の壮大なネタに引っかかった気もしないでもない。
 ここから鍋倉山の方に出られるらしい。途中にコンセイ様があるらしい。コンセイ様というのは、要するに魔羅だペニスだちんちんだ。
 雪道をとぼとぼと歩いていった。雪上に先人の足跡が残されている。気になったのが、動物のものらしいそれ。犬の散歩かと思いきや、人と関係なく残されいる。そういえば、この辺は熊が出るとか。熊じゃなくて狐のように思えたが、用心するに越したことはないな。
 やがて、コンセイ様の存在を知らせる標識に行き当たった。ここから200mほど、荒れた道を登るらしい。えーっ、それはごめんだ。そもそもそこまで苦労して作りものの魔羅を見たくはないわい。
 先に進んでゆくと、やがて鍋倉公園の上の方に出た。ついでに頂上まで登ってみた。展望台があるのだが、なぜか少し下った三の丸にある。遠くまでよく見通せた。やたら立派な展望台だった。
 一の丸まで登ったが、かつて藩主の館があったという札が立っているだけだ。
 ふと、太陽がえらく低くなっているのに気づいた。関東よりかなり東に位置するこの地は、日が暮れるのが早い。しかも西は山ばかりなので、あっという間に没してしまうのだ。公園を降りて、ホテルにチェックインすることにする。
 しかし夕食はどうしよう。何か店があるだろうと思っていたのだが、想像以上に寂しい町並みだ。なにか買って帰るかと思っても、コンビニの類はない。
 そういえば、スーパーらしきものがあったぞ。駅近くのトピアという施設に入ると、確かにスーパーだった。おっ、地ビールがある。
 ホテルにチェックインし、適当に買った弁当で適当に夕食にした。ビールは遠野の地ビールでズモナという銘柄。バイツェンとピルスナーがあったので、バイツェンを買ってみた。ものすごくすっきりした飲み口で、ややもすると物足りなく思うほどだった。
 なれない雪中歩行の結果か、異様に疲れていた。断続的に眠っているうちに、夜は更けていった。

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