Strange Days

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2000年3月25日(土曜日)

今夜の観望

星見 23:55:00
 さて、シンチレーションの安定した今夜は、オリオン大星雲が相変わらず良く見えた。双眼鏡を東に向け、上りつつあるおとめ座方面を眺めた。おとめ座近辺には、髪の毛座局部銀河群があって、M天体が密集しているはずだ。しかしおとめ座の形が良くわからない。スピカだけは良くわかるのだが。
 LV4mmは5mmに比べてさほど差がないように見えた。あまり必要なかったかもしれない。
 チャットしてインターネット放浪している間に、とうとう赤道儀と三脚を発注してしまった。最近発見したインターネット通販(確かKYOEIだか誠報社だかがやってるところ)で三脚とムーングラス込みで発注した。モノはVixenのGP赤道儀に赤経モーターを組み合わせたもの。問題はベランダに収まるかどうかだが......。
 チャットを抜けてベランダに出ると、もう空は月の天下だ。おとめ座方面を見るなら0:00辺りが良さそうだ。月をしばらく眺めて寝た。
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2000年3月25日(土曜日)

秋葉原

暮らし 19:14:00 天気:晴れ
 前日、明け方まで観望していたので、寝たのは6:00近かった。それでも昼前には起きようと思っていたのだけれど、実際に目覚めたのは13:00過ぎ。身支度して秋葉に出かけた。
 秋葉原駅の電気街口ではあまりの混雑にロープ規制が始まった様子だ。僕は昭和通口から出るので問題なし。実際、デパート口に回ったほうがよほど早いんじゃないだろうか。
 昭和通口を出て、まずはスターベースへ。途中のカメラ屋でE950に取り付け可能なスリムタイプのスリングと、レンズクリーニングキット、汎用のレリーズを買った。レリーズはE950には本来接続できないが、装着部品を自作するつもりだ。
 スターベースに入ると前回と異なり他の客がいて、店員のおじさんと親しげに話している。適当なアイピースと、ムーンフィルターを買いたかったのだけど、ちょっと悩んでここではひよった。また100EDに最適な架台について相談したかったのだけど、他の客の相手で忙しそうだったのでやめにした。
 その足で書泉グランデに向かい、雑誌を何冊か購入した。今回はじめて4階以上に上ったが、ずいぶん濃い品揃えだ。
 KYOEIではスターベースで買わなかったLV4mmを購入。これを100EDにつけると160倍だ。なんだか中途半端だが、この次はいきなり3.2mmとかになって200倍を超えてしまうので、これくらいが使い勝手の点からも限界なのだ。その意味では、KYOEIオリジナルのLA3.8mmが良いのだけれど。
 電気街を巡回中、メッセサンオーでULTIMA1から8までを一まとめにした恐ろしいパックを発見。エミュレータで動く代物らしい。こんなものを買っては他に何もできなくなる、と警戒はしたものの、事実はこいつを手に店を出る羽目に。うーん、Wizといいこれといい、やばい物が次々に手に入ってしまう。
 歩くのも飽きたので、とんかつを食って帰った。
 帰って早速Ultima1をプレイしてみた。驚くべきことにこれはファミコンかなんかのコンシューマ機用の移植品を、エミュレータ上でそのまま動かしているという代物だった。でも動作は予想外に軽快だ。ファミコン用は3の移植のあまりの酷さに憤慨し(許すまじ秋元康)、4の出来の良さに感激した経験があるのだが、1と2はプレイしていない。というか最後までやり通したのがファミコン版の4だけという無惨な状況だ。ウルティマ萌えな人に「ウルティマってのはねえ」などとほざけば撲殺間違いなしだ。
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2000年3月24日(金曜日)

今夜の観望

星見 23:13:00
 春めいてきて、風も凪ぐ日が増えてきた。今夜も多少の風はあったが、大体のところシンチレーションは安定していた。
 帰ってすぐに望遠鏡を西空の木星と土星に向けた。既に低高度にあるこれらの天体は大気の影響を大きく受け、シンチレーションは安定せず、また倍率を上げるとどんより濁ったように見えてはっきり見えない。観測シーズンは終わった。
 望遠鏡をまだまだ高度の高いオリオン座に向けてみた。赤道儀と三脚を逆接する前は見えなかった高度だが、今はさらに天頂近くまで良く見える。ただし手前の手すりが邪魔になるので、エレベータを上げなければならない。オリオン大星雲は相変わらずの美しさ(もちろん写真で見るようなものではない)。トラペジウムも四つまで分離できた。M42も細かな星まで良く見えた。
 ところで手持ちのBORG製SWK22mmは確かに見かけ視野が広そうではあるのだけど、アイリリーフの短さには閉口する。本当に密着しないと良く見えないのだ。WO13.5mmも似たような傾向があるので、BORG製の安価な接眼鏡はアイリリーフと引き換えに安価を実現したのかもしれない。SWKは視界周辺の像の崩れがすごい。でもまあ視界中心で像が安定していれば問題ないだろうし、物凄く安いのでなんでも許せちゃうな。軽いのも良い。
 ちょっとチャットしようと思ったらもう終わっていたので、2:00くらいにまたベランダに出た。この時刻には月が沖天にかかっていて、空一面が真っ白という感じだ。やむなく月に望遠鏡を向けた。1週間ぶりの月はかなり欠け始めていて、昼夜境界線上の山脈がくっきりと見えた。
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OFFICE2000

コンピュータ 19:11:00 天気:晴れ時々曇り
 会社の統一オフィススートがOFIICE95からOFFICE2000に変わった。相変わらずのMS萌えだな。またメールに巨大ファイル添付する馬鹿が流行ることだろう。いいかげん、これくらいはHTMLで十分だとかいった判断ができるような教育が必要なんじゃないだろうか。SE/営業さんなんて下手すりゃ入社以来MSなフォーマットがすべての世界に生きて来たのだろうから。
 OFFICE2KをいれてWordもExcelもさらに重くなって嫌なのだけど、唯一良くなったのがIME2000だ。前のIME98があまりにもひどかった面はあるにせよ。学習のストラテジがよほど変だったのか、あっという間に変な学習をしてしまうのには閉口した。ハッ、その意味ではIME2Kも油断はならないな(単に辞書がリセットされただけかも知れず)。
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2000年3月23日(木曜日)

吉野屋

暮らし 23:11:00
 家に帰る前、帰って食事を作る材料が無さそうに思えたので、吉野屋で牛丼をかっ食らって帰った。特盛を食らいながらふと壁の広告スペースに目をやると、「吉野屋中田北店3月上旬開店予定」とあるのが目を引いた。やっぱり近所に出来るようだ。が、もうとっくに3月上旬は終わっているような気がするのだが。
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3/23の暮らし

暮らし 23:09:00 天気:雨
 朝方はまだだったが、昼前から雨が降り始めた。それでも宵の口くらいまでは降ったりやんだりする程度だったのだが。
 21:00前に帰宅した頃から、天候が急変した。大粒の雨が横殴りに吹き付け、強風が雨戸を激しく揺らす。ベランダに吹き込んでくるような強風は初めてだったので、ちょっと驚いた。まだ雨が小降りだった時刻に帰れて良かった。
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2000年3月22日(水曜日)

自動導入

星見 23:55:00
 眠れないのでインターネット遭難に出かけた。望遠鏡関係を回っていると、最近Meadeが売り出した低価格の自動導入望遠鏡をあちこちのショップで見かける。60mmの屈折式に自動導入用コントローラを組み合わせて5万しない。なんだかやたら欲しくなるアイテムだ。
 Meade製品は海外のショップと国内のショップとで価格差が目立たないものが多い。ETX90ECやLX200-20なんかはかなり戦略的な値付けがされているといえる。市場を広げるのに熱心なメーカーのようだ。逆にCelestronは内外価格差が冗談のようなレベルにある。国外で3000ドル程度の製品が国内では60万円で売り出されるなどざらだ。望遠鏡の評判はいいのだが、その姿勢には大いに疑問を抱かざるを得ない。
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去る人

暮らし 23:07:00 天気:晴れ
 会社の同僚が名古屋に帰る事になり、近くの別の部署に配置替えになる人も含めた送別会に参加。僕は名古屋に何の未練も無いのでなんとも思わないが、名古屋出身の人たちの中にはうらやましく思っている向きもあるようだ :)
 帰宅したのは21:00頃だったが、既に頭が痛くて眠かったので、着替えてそのまま爆睡した。ここ数日、星を見る余裕を失っているな。
 しかし1:00過ぎに目覚めた後、寝付けずに朝までゴロゴロしている破目になった。慣れない事をしたせいだろうか。
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2000年3月21日(火曜日)

耳に残るあの曲

思考 20:05:00 天気:晴れ BGM:TAISO/YMO
 数日前から頭の中をぐるぐる繰り返されている曲がある。ハミングできるくらい曲も音も明瞭に覚えているし、いかにも英語圏のロックらしい歌詞も書き出せそうな気さえする。音的にアンスラックスのような気がするがインペリテリだったような気もする。まあ音的にはスラッシュぽいのだが(アンスラとインペリでは、やすきよとダウンタウンくらい違う)。
 こういう時に頭の中の"音"を取り出す技術はどれくらい可能性があるのだろう。音とはもちろん主観的なものだが、絶対音感とかあるいはもっと素朴に譜面というものが成り立っている事を考えると、ある程度客観的にも成立しているように見えるのだ。人間の頭の中で起こっているあまりに複雑な事件を再現する事は不可能かもしれないが、もしも可能ならば従来の芸術論に大きなインパクトを与えるだろう。音を取り出せるなら文章だって取り出せるはずで、やはり文藝へのインパクトも大きそうだ。
 音楽家にしても小説家にしても、譜面や原稿用紙という客観的なモノの上にごく個人的なモノを展開できるのが面白い。音楽や小説という個人的な世界が、譜面上の音符や原稿用紙の上の文字という抽象的な記号列に置き換えられ、それらはさらに受信者によって様々な解釈をされる事で超個人的な発展を遂げていく。
 まあ記号列というものが客観的な存在であるとするのは一種の信仰なのかもしれないけれど、先の構図からすればこれらがボトルネックになっている事は確かなような気がするのだ。それを脳内の情報(と決め付ける事で科学的価値観に屈従しているのかもしれないが)を直接やり取りする事で、乗り越える事は出来ないだろうか。記号がもたらす客観化を回避する事で、個人的な情報をあくまで個人的なままに受け取れないだろうか。
 しかし個人的な情報はあくまで個人の内部にしか成立していないという観察からすると、いったん記号化しない限り個人の内部情報を他者が受け取る事は出来ないような気もする。つまり生の個人情報を受け取ったところで、それを解釈する手がかりが無い限り、無意味なノイズに過ぎないだろう。記号化は情報を共有化する上で避け難い作業なのかもしれない。
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2000年3月20日(月曜日)

今夜の観望

星見 23:04:00
 3連休も終わり。黄昏ながらチャットして、抜けた後に望遠鏡を出した。昨夜はシンチレーションがきわめて安定していたが、今夜はちょっと風がある。
 満月が沖天高くにかかっているので、他の星はほとんど目に付かない。素直に月に望遠鏡を向けた。春分の日の満月は目が焼けそうなくらいの明るさで、実際のところ明かり無しで本を読めそうなくらいだ。
 しばらく130倍弱で月の地表を眺めていたが、物足りなくなってきたので思い切ってLV5mmに2.2倍バローレンズをかませてみた。280倍強の高倍率だ。さすがに視界がかなり暗くなるが、対象が月なので光量は十分だ。重くなってプラスチック製のチューブでは持たないのではないかと思ったのだけど、案に反してがっしりと支えてくれる。差し込みがかなりキツ目に作ってあるのが幸いしているのだろう。
 さすがに視界はぼやけるが、40倍程度ではまず見えない月表面の細かな地形も良く見える。月や惑星相手なら結構常用できるかもしれない。
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ご近所出店ラッシュ

暮らし 20:02:00 天気:晴れ
 前日までのぐずついた天気はどこへやら、終日いい天気だった。しかし我が輩は終日部屋の中でゴロゴロしていたのだった。困ったものだ。
 さすがに16:00くらいに体が腐りそうな気がしたので、ちょっと近所の散歩に出かけた。望遠鏡を出すにふさわしい開けた場所を探した。途中に畑が多くて、結構開けた場所は多そうだが、土埃が多そうなのが難点だ。その他にちょっとした公園のような、舗装された区画もあった。街灯が過大に明るくなければ有望そうだが。
 国道に戻ってアパートの近所まで戻った時、最近建設中の建物の外に吉野屋のアルバイト募集の文字を見つけた。もしかして吉野屋がこんな近所に出来ちゃうんだろうか。するとかなり強烈に嬉しいのだが。CoCo一番辺りも出来てくれないかな。近所には中華料理屋、ファミレスも多いので、もう選り取り見取りだ。
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2000年3月19日(日曜日)

今夜の観望

星見 23:01:00
 予報では終日曇りという事だったし、チャットしながら宵の空を見上げると雲が多かったので、今夜の観望は無しだろうと思っていた。ところがチャットを抜けてふと空を見上げると、晴れ晴れと冴え渡る夜空である事よ。
 いい機会なので、望遠鏡に架台にちょっと手を加えた。手を加えるといっても、架台への赤道儀の取り付け方を逆に変えただけだ。従来は三脚の一辺が手前に来るようになっていたのだが、それを逆にして手すりの側に一辺が来るように変えた。こうすると、赤道儀の中心がより手すり側に寄り、天頂まで見渡せるようになるのだ。その代わり、手前の低い高度の天体を見るには、エレベータを上げる必要が生じた。こうすると振動に弱くなるのだが、致し方ないだろう。多少なりとも改善しようと、オプションで買ったストーンバッグを付け、適当な重しを載せてみた。多少、耐震性が改善されるようだ。
 早速、西空にかかっているスピカ(前にカペラと書いたが間違え)やアンタレスに向けてみた。満月間近の月が非常に明るく、明かり無しでも天文ガイド誌の星図を読めるほどだった。星図と見比べながら、ようやく今見ているのがスピカとアンタレスである事を納得した。しかしM4が見えないのは気持ち悪い。天頂近くのアルクトゥルスにも望遠鏡は向けられるので、観測範囲はかなり広まった感じだ。しかし都市の光害はなかなか難敵である。
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スターベース

暮らし 20:57:00 天気:曇りのち晴れ
 午前中に目覚めると、空は曇り。前日の天気予報では午後にかけて雨になるという事だったが、家にくすぶっているのもなんなので出かける事にした。
 出かける前に秋葉ホットラインを見ると、メモリがまたしても暴落気配。急いで買わなくて良かった。メモリもプロセッサも1Gクラスが視界に入ってきた。
 電車を乗り継いで、4時前には昭和通口を出ていた。いつもなら書泉ブックタワー方面に曲がるのだが、今日は逆方向に向かった。秋葉近辺にあるもう1軒の望遠鏡屋、スターベースをのぞいていこうと思ったのだ。スターベースは高級/高剛性望遠鏡で有名な高橋製作所の直営ショップだ。太い通り二つ目を曲がるとあるという事だが。
 そこに行くまで、今まで来た事が無かった方面の店を見る事が出来た。カメラ屋があったのでのぞいてみたが、E950のパーツはなさそうだ。しかし汎用の部品は扱っているので、なにか欲しい時に便利かもしれない。その近くにはドトールもある。電気街方面のドトールは常に超満員なので、空いていそうなこっちは便利そうだ。
 さて、地図通りに歩いていくと、確かにスターベースの文字が目に入った。大きな通りに面した、便利そうな場所にある。店は静かで、おじさんが一人、奥のカウンターに腰掛けていた。KYOEIよりちょっと広くて、望遠鏡の品揃えも豊富だ。高橋の高そうな(実際高い)望遠鏡もいくつか置いてあった。FS-60ってちっこいんだな。ドブソニアンも置いてある。
 面白そうな望遠鏡もあった。Meadeの小口径(60mm?)屈折経緯台で、望遠鏡としての能力は低そうで安価なのだが、ETX系列で大々的に売り出した自動導入が可能な機種らしいのだ。自動導入付きで5万円しないので、ガイド用にどうだろうか。などと考えるくらい天体の導入に苦労する俺様である事よ(爆)。
 続いてKYOEIに寄った。どっちかで4mm弱、あるいは7mm弱程度のアイピースの安いのを探したが、あまりピンと来るのが無かった。単体で、あるいは手許の2.2倍バローレンズと組み合わせて200倍程度の倍率を得たいのだが。
 結局、ここではなにも買わず、電気街巡りでPalm用画面保護シートとPC-UNIX用VJEを買って帰った。
 帰って、鉄腕ダッシュを見ながらPalmにシートを貼り付けたが、どうしても細かな泡が入ってしまう。しかも慎重に何度も貼り直したためか、指の当たっていた辺りに埃が盛大についてしまった。どちらも実用上の問題はないにせよ、なんだか頭に来る。
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2000年3月18日(土曜日)

番組改編期だ

テレビ 23:55:00
 NHKの番組に3月一杯で終わりというのを見かけるようになった。サイエンス・アイは4月から23:30に移動してこっそりと続くようだが、三井ゆりが降りた。三井さん、ご苦労様でした。って何者か知りもせんで気安く労う俺様は何者だ。
 日本映像の20世紀もそろそろ全都道府県をカバーする頃だろうから、たぶん終わりだろう。すると9:00からぽっかり開くことになるが、なにを入れるんだろう。未来潮流が復活するならちょっと嬉しいぞ。大穴でYOUの復活だ(どんな大穴だ)。
 23:00からの「街道をゆく」も今週で最終回。今回は司馬の絶筆となった、また出版もされてなかった(と思ったらちゃんと出版されていた)濃尾参州紀行だ。実際の道行きは尾張から三河にかけてだが、この地域から出た戦国の三雄のうち、信長、秀吉は美濃と縁が深いので題名のようになる。
 話は信長の桶狭間強襲に始まる。東海一の弓取りといわれ、決して暗愚でも怯懦でもなかった今川義元を討ち取ったこの戦いは、小勢力に過ぎなかった織田勢力を一気に歴史の表舞台に立たせることになった。信長は神仏を奉ずることを嫌い、むしろそれを利用する事に努めた(足利将軍の扱いと同じだ)合理主義者といわれているが、司馬の見方もそれに準じている。信長は熱田神宮の権威を利用して兵を奮い立たせ、桶狭間強襲戦に打ち勝ったという。信長の偉さは、と司馬はいうのだが、この桶狭間の模倣を二度としなかった点にある。つまり桶狭間の戦いを奇跡と見て、同じように圧倒的に不利な状況からの戦いは挑まなかった点にあると。これは確かにそうなのだろうが、同時に織田が既にかなりに勢力を築いていた点も見落とせないだろう。そもそも極小豪族に過ぎなかった毛利元就の場合、その初陣、郡山城籠城戦、そして厳島の奇襲戦と、大勢力になれるまで幾度となく"奇跡の"勝利を遂げねばならなかった。いずれの場合も大勢力を敵に苦しい戦いを強いられ、物量で勝ち抜けるような戦いは老境に差しかかって以降の尼子攻めなど、むしろ少数とさえいえるくらいだ。こうした点を見ると、信長にはいくつもの恵まれた条件、運がついて回った点も否めず。それが天下人に近づいた少数者の条件であったとさえいえるのではないだろうか。
 司馬は三河に残る蜂須賀小六と秀吉、当時日吉丸といわれた小者の出会いにまつわる伝説が残されている。また小六と秀吉が八丁味噌を盗みに蔵に忍び込んだという残されている。美濃から尾張にかけて小勢ながら野盗や野武士を糾合して大勢力の下働きもしていた小六が、なにを好き好んで三河に出張したというのだろう。ともあれ、なぜか小六と秀吉の伝説が三河にいくつも残されているのである。司馬はそれを秀吉が偉くなりすぎたからだといっている。小六程度の小勢力は、歴史のなかに埋もれるはずなのに、秀吉という天下人と結びつけられたがために、純朴な三河人の記憶に「情け容赦無く」残されたというのだ。
 三河といえば最終的な天下人となった家康の祖地だ。家康の祖先は三河松平郷に流れ着いた修行僧だといわれている。その三河の小豪族が徐々に勢力を伸ばし、家康の父の代には三河半国を占める有力勢力にまで発展している。ところが東の今川氏、西の織田氏という有力な勢力に挟まれたのが松平氏の不運で、あっと言う間に三河は二大勢力の草刈り場と化してしまった。家康も少年時代は織田、次いで今川に人質として送られ、更には父が家臣に弑殺されるという事件も体験している。恐怖に満ちたものだったろう。しかしその家康を家臣団がよく支えた。家康にとって唯一最大の宝は、彼の幼少期からともに艱難辛苦を味わってきた家臣団だったといえる。彼ら家臣団から見て、家康は「愛敬のある人」に映っていたらしい。愛敬とは、愛すべき欠陥を抱えていることと見ていい。家康の場合、それは臆病さだったろう。
 家康の臆病さと勇敢さは三方が原の一戦に現れている。家康は彼を無視して進もうとする武田信玄の大軍に挑みかかるという暴挙を図り、思慮深い信玄にまさに鎧袖一触というべき無残な惨敗を遂げてしまう。この時に本多忠勝の勇戦により辛うじて危地を逃れるが、飛び込んだ浜松城ではすべての門を開け放ち、かがり火を皓々と灯すという一か八かの策略に出た。案の定、疑い深い武田の追撃隊は、策の存在を疑い、結局引き返してしまう。この敗戦で、家康は逃げ帰る途中に恐怖のあまり脱糞したという逸話も有名だ。この様に家康という人は勇敢さと臆病さの両極端を揺れ動く振幅の大きい人であり、それが天下取りという大事業を成し遂げたという想像も成り立ちそうだ。
 この家康の人柄に関する考察が、司馬の絶筆となった。
 1年に渡った街道をゆくも、今回が最終回。司馬遼太郎という人は司馬史観という(たぶんに批判的な)ものも語られるほど、近年の歴史観にインパクトを与えた人だった。しかし司馬は小説家だ。桁外れの見識を持つにせよ、その真偽を問われるような立場にはない。司馬の提示する"歴史観"に乗ったり誹ったりする方がおかしいのではないだろうか。
 僕が最近になって司馬の書くものを好むようになったのは、そのものの歴史観というより、歴史を眺めながら密やかに笑ったり悲しんだりする態度を気に入ったからに過ぎない。過ぎないなどと口幅ったいことをいえる相手ではない大作家ではある。しかし司馬自身は、自分の著書を斜め読みしてお気に入りの逸話や、自分の持つ幻想を投影するような読まれ方を、案外に疎ましく思ってはいなかったのではないだろうか。いずれにせよ、歴史とは無数の価値観が、残された事物をその物差しで読んでいく作業のことなのだから。
 司馬の面白さは中国に対して下へも置かぬ評価を書きながら、実はそこかしこで現代中国の矛盾を密やかに暴き立てているような、筆の掠れを読ませるようなところにある。歴史に対しても、また須田画伯に対する剽軽な記述にもそれがある。過ぎ去ったものに哀惜の想いを評しつつ、実はその裏で舌を出しているようなユーモアが、どこか殺伐としがちな歴史という舞台を、これほどまでに魅力的にしてみせたのではないだろうか。
 テレビでの放送は終わったが、本の方はやっと20巻を読み始めたところだ。今しばらく、司馬の剽軽な筆に付き合える。
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ゴロゴロ

暮らし 22:54:00 天気:曇り
 今日はひたすらなにもしないで怠けるつもりだったので、ひたすら惰眠を貪った。おかげで夕暮れまでには立派な自家中毒にかかっていたものだ(ダメだなあ)。
 それも夕食に鍋を作って汗をかきつつ食らい、長風呂で汗を流すとさっぱり解消された。
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